プロップスってなに?

普段でも馴染みのない言葉ですのでMCバトルを最近見始めた人はまったく何のことか分からないと思います。
そもそもプロップスというのは英語のPropの複数形で意味は“支え、支持者”などの意味です。
このプロップスという言葉はMCバトルにおいてどんな使い方をするのか例題を使って説明します。

例えばこんな感じ、『今のバトルは○○のプロップス勝ちだよ。スキルでは○○方が勝っていた。』
このようにバトルのおいてその場のスキルよりも人気が高いMCが勝った場合などに使われます。
つまりMCバトルにおけるプロップスとは人気票や組織票のことを言います。

よくプロップスが話題になるバトルの特徴はまだ無名のMCと有名なMCのバトルや地元で絶大な人気を誇るMCが出るバトルなど。
正直観客が勝手に支持しているだけなのでMC達には非が無いように見えますが一部では同情を誘ったりしてプロップスを誘発するMCも中にはいるので純粋なスキルだけで競い合いたいMCや観客からは嫌われています。
また大会よってルールは違いますが観客の声援が勝敗に直結するMCバトルの大会もあるのでプロップスによる勝敗への影響は少ないとは言えません。

今回はプロップスで物議を醸した『UMB2017 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL "DOTAMA vs ふぁんく" 』の試合を振り返りながらプロップスについて考えています。

『UMB2017 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL “DOTAMA vs ふぁんく” 』

まず初めにこの試合はUMBという日本でも最大級のMCバトル大会の決勝戦でこの試合に勝った方がチャンピオンとなる重要な試合です。
UMBのチャンピオンというのはラッパーにとってとてつもない名誉ですしラッパーとして一躍有名になるためのチャンスとも言えるのでUMBに賭ける思いはみんな強いものをもっています。

その中でもDOTAMAはUMBに並々ならぬ思いを持っていて2017年は自身のラストチャンスという気持ちでこの大会に挑んできています。

DOTAMAは栃木のラッパーでフリースタイルダンジョンの初代モンスターとして活躍しました。
MCバトル大会でも相手を抉るようなdisと派手なスキルはないですが安定したリズムキープ力にDOTAMAの一番の武器とも言える聞き取りやすい滑舌と声量でMCバトルでの一時代を築いていきました。
特にR指定とのライバルであり戦友関係は多くのバトルヘッズ達を魅了しUMB2013年と2014年の対決は伝説の試合と言われています。

一時期MCバトルを引退していましたがその後復帰し更にパワーアップしたdisで観ているこっちがひやひやするような熱いバトルを繰り広げています。

一方ふぁんくは大阪のMCでDOTAMAのライバルであるR指定と同じ梅田サイファーの元メンバーです。
ギャグラッパーとして有名ですがただのイロモノラッパーというわけではなくフロー、ライミング、リズムキープ、全てのスキルが高水準で特に即興性の高いライミングは一級品で一番ラップが上手いMCとしてふぁんくを選ぶMCも多いです。
そんなスキルフルはラップに加え大阪仕込みのギャグで上手いし面白いというラップができる凄腕のラッパーですし個人的に好きなラッパーの一人です。

そんな二人の対決ですが、登場のDOTAMAはギャグラッパーといて活躍しておりギャグラッパー対決としても話題なりました。
この対決と今回のテーマである“プロップス”がどのように関係しているかと言うと、今年をラストイヤーとして臨んだDOTAMA、ギャグラップで日本一になるという自身の夢を叶える為に何度も破れた決勝の舞台に上がります。
当然DOTAMAの悲願を願っている観客も多くいてなんとかDOTAMAに勝ってほしいと願って声援を送ります。

ふぁんくもラップの上手さには定評がありますがいまいち結果を出し切れず未だ無冠のままでしたが今大会では物凄い強さをみせて基本的に不利と言われている先行で名だたるMC達を蹴散らしてきました。
そんな今大会絶好調のふぁんくと悲願の優勝を狙うDOTAMAという構図がここに完成したのです。

もちろんふぁんくも会場がDOTAMAの優勝を望んでいることも感じてますが準決勝の呂布カルマ戦でも『お客さんはドラマを求めてる、呂布カルマやDOTAMAを求めてる。だけど俺はそんなしょうもねぇシナリオ軽く塗り替えるぐらいのスキルを備えてる』とプロップスよりもスキルで勝つ気満々でいます。

ちなみにこの試合はなんと3回も延長しています(笑)
この試合でプロップスについてもっと二人が対話しているのが2度目の延長戦ですね。
まずDOTAMA1バース目の入り『仕事も貰った、お金も貰った、名誉もプロップスも貰った…』というフレーズで会場は大盛り上がりします。
これはUMB2016のDOTAMA VS NAIKA MC戦での自身のパンチラインのセルフサンプリングとなっています。
なので会場からは大きな歓声が上がりますがこれに対してふぁんくは『今さっきバースの入りまだ一言目も発してない時点でお客さん「ワーッ」ってそれ違くない?さすがに。ちゃんと言葉聞いてから反応しようやって思う』とまだ言葉も言い切っていない時点でサンプリングというだけで反応して湧いてる会場の雰囲気に苦言を呈します。

これは僕もふぁんくに同情というか何を言うかではなく誰が言うかという問題はMCバトルにおいて重要ですが、この時の会場の雰囲気は明らかにDOTAMA押せ押せムードだったと思います。
これに対してDOTAMAも『同情票じゃねえんだよ。呂布さんも俺もやることやってきたんだよ。だからそれをここで言ってるだけなんだよ。お前は何も残してねぇんだよ。』と反論。
プロップスがあるのも今までのDOTAMAのラッパーとしての実績の積み上げがあったからこそできた物でその場の一瞬の雰囲気で出来上がる物ではないのも事実ですね。

ふぁんくも『TV出てるからそんな大きいこと言えてるけど、10年前の自分に同じことが言えるか?10年前の売れてない自分に「お前何も残してねぇだろ?」ってダサくないそれ?HipHopはなんにも持ってない 持たざる者が力持つ音楽じゃないの?』と反撃。
僕はこのバース結構好きで特に最後の持たざる者が力持つ音楽っていうのが刺さりました。
HipHopはもともと貧しい黒人の音楽でどん底からの逆転や貧困からの脱出などがテーマにされることが多いです。
なのでふぁんく言う持たざる者が己のスキル一つでのし上がっていくのがHipHopだという主張はすごく良いと思いましたし、その場の即興性やスキルで勝負したいふぁんくの強い気持ちも感じました。

両者の激しく攻防は続きますが結果は3度の延長を経てDOTAMAが悲願の優勝を手にしました。
この勝敗についてはネットで賛否を呼んでいますが結果的に素晴らしいバトルになったのは間違いないです。
またプロップスを語る上ではかなり重要な試合だと思います。

プロップスとMCバトル

僕はどちらかというとふぁんくの考え方が好きでしたし単純にラッパーとしてもDOTAMAよりふぁんくの方が好きだったのでリアルタイムで観てた時はDOTAMAに対して憤りを感じていました(笑)
この時は残念ながら準優勝でしたがその後大会で何度も優勝しているのでふぁんくの実力は多くの人に認められているでしょう。
DOTAMAに関しても当時が嫌いでしたがカンバックしてイカれサイコメガネに進化した今のDOTAMAは結構好きです(笑)

プロップスの判断はとても難しく、ラッパーとしてのスキルがあるからこそ実績を積み上げることができそこから得られる物がプロップスなので単なる同情票として片付けることはできません。
しかしMCバトルというのはバトルの瞬間でのスキルや即興性の競い合いだと個人的には思うのでなるべくMCの人気による審査の差は排除しなければなりませんが、その人気の獲得こそがそのMCのスキルの現れとも言えるのでやはり難しいところです。

最近ではキャラ先行のラッパーも増えてきているのでプロップスが悪い方向に行かなければいいですね。
またMCバトルも勝ち負けにこだわりすぎてスポーツ化して即興の音楽を楽しむ部分が損なわれている感じもします。
ふぁんくもこのバトルで言っていましたが、カッコいいラップをみんなの耳に届けて気持ち良く躍らせたいMCがこれからも活躍できるMCバトルであってほしいと僕は願います。
長くなりましたが今回の記事はここまでです。閲覧ありがとうございました!